• 日本語
  • 英語

城戸・笹部・千葉研究室

城戸の独り言

2001年12月21日
有機ELの異常な盛り上がりについて(その2)

実は、前回の「独り言」で取り上げた「有機ELの異常な盛り上がり」は、加瀬氏のホームページ(http://www.devicetimes.com/)に掲載された文章について反論したものでした。加瀬氏の名前を出すと御迷惑がかかるかと、控えさせていただきましたが、加瀬氏がこのことを気になさらないようですので、今回は実名(ペンネーム?)入りで反論させていただきます。

 

ちなみに私は、新幹線の中でパカパカとシラフでバカ文を執筆しているのであって、決して一杯飲みながら赤ら顔でいい気になって書いているのではないことを最初に申しあげます。文体がバカっぽく、品がないのは私の性格がそのまま出てるだけですから。

 


加瀬氏いわく:
先日、友人が、「Y大学のDr.K助教授が、あなたの『有機ELの異常な盛り上がりについて』の反論を書いているよ」と教えてくれました。面白く読みましたが、私にとって、Dr.Kのこのような反論は意外でした。日本の大学の先生達は、他からの反論を極端に嫌う性向があります。「部外者は黙れ」と言う姿勢が目立ちます。多くは「部外者からの反論には無視」を決め込みます。

 

城戸:
そうそう、全く同感。私は過去に「大学教授の三分の一は性格異常者で、三分の一が何も出来なくて寝てる人、残りの三分の一が普通の先生」てなことを、大学の広報誌に書いて専攻長からお叱りを受けたぐらいで、大学人の非常識さ、バカさ加減にはあきれております。もちろん、この私も性格異常で、何も出来なくて、しかもシラフで人の悪口を言うという、極めて稀なチョーダメ助教授で、だから教授にはしてもらえないんですけどね。

 

 

加瀬氏いわく:
無機半導体の話から、何故、人間の寿命の話に飛ぶのかは理解できません(^^)。私は有機ELの将来性を語っています。携帯電話程度の応用で良いというのなら反論はありません。
(中略)
さて、Dr.Kは「使用期限が3年でも良いから安いものを作ろう」と提案しています。それを柔軟な発想かのように主張されていますが、私は「安かろう悪かろう」に回帰しようとしているだけだと思います。つまり、技術レベルが低い発展途上国型の戦略だと考えます。そのような製品が市場を支配できる、あるいは高度成長できるとは思いません。

 

城戸:
あの~、私は安かろう悪かろうを提案しているのではありません。有機ELは、画質、消費電力、軽量、すべての特性で液晶を上回るのです。いいものを安く作ろうと、言ってるだけです。有機ELのような素晴らしいデバイスを10年使えなければならないから、商品化すべきでないという、あなたの考えを否定しているだけです。今、3年しか使えないならそのような用途から実用化しましょうと言ってるだけです。それに、同じ携帯電話を10年使いたい人は、液晶のついた携帯を使えばいいじゃないですか。
一つのものをすべての人が使う、いわゆる「One for All」的な考え方は、これまでの国内企業とってきた大量生産型の商売の仕方であって、決して消費者の立場に立ったものとは思えません。有機ELの高画質を楽しみたい人には、10年持たないけど有機ELをという考えも必要でしょう。実際、国内で売られているすべての携帯電話は同じような顔をして、全く個性がなく、魅力がありませんよねえ。21世紀は、それぞれの消費者のライフスタイルにあわせた商品、すなわち「One for Each」であるべきと考えます。それには、本質的に低コストで生産できなければ実現できません。液晶と有機ELを比較すると有機ELの生産コストは、液晶の4掛けになると試算されてます。どっちが究極のディスプレイか、言わずともわかりますよね。

 

 

加瀬氏いわく:
「携帯電話を10年使う人がこの世にいますか?」と言うことですが、そう言う人はいないと言うことを前提に論理を展開しなければならないことに有機ELの弱みを告白していることに、Dr.Kは気付いていないのです。「10年使えるものが、高価」と定義していますが何故なのでしょうか?

 

城戸:
あの~、10年使えるものが高価とは言っておりません。だいたい液晶なんて安いじゃないですか。15インチで2~3万円ですか。画質からすると値段相応と言えますけどね。
言葉足らずだったかも知れませんが、私が言いたいのは、10年持たせるために開発に5年多くかかるなら、3年使えるところから今使おう。3年しか使わないものをわざわざ10年持たせるためにコスト高になるくらいだったら、そんな必要ない。と言ってるだけです。あなたが、発光素子は10000時間持たなければ実用化すべきでない、てなことをおっしゃるから、売り言葉に買い言葉でこう言ったまでです。

 

 

加瀬氏いわく:
CRT-TVも、LCDもLSIも10年くらいは平気で使えて、かつ安いのです。何故、「10年のものが高価で、3年で良いから安いものが良い」と考えるのが柔軟な発想なのか全く理解できなません。

 

城戸:
あのね~、30年ほど前にカラーテレビが出たとき、いくらでした?サラリーマンの初任給の何ヶ月分でした?TFTカラー液晶が出たとき、インチ当たりいくらでした? 
決して安くなかったですよねえ。CRTもLCDも出たときは目ん玉飛び出るくらい高かったけど、今は企業努力で安くなった、と訂正してくださいね。

 

 

加瀬氏いわく:
私は、電子デバイスの研究開発の経験の中で、「安くて良いから、3年程度の寿命で良い」と言う研究テーマの存在は聞いたことがありません。また、Dr.Kとは、技術オタクの定義が異なるようですね。かって、日本の繁栄を支えたのは、技術大好き人間たち、つまり技術オタクだったのです。

 

城戸:
蛍光灯は1年しか持ちません、けど安いから普及します。電球は、もっと寿命が短いけど、もっと安くて世界中に普及しています。これも、究極の発光デバイスの一種と認める寛容さ、エジソンを尊敬する心が必要ですよ。

 

 

加瀬氏いわく:
私は、最新の情報は展示会や学会での現物を見て最新レベルを判断することにしています。それが、現在、実現可能な最高レベルと考えるからです。流行の技術には、必ず華々しい成果の発表合戦があるのは歴史が証明しています。
(中略)
それは、学会などの多くの発表が、再現性に乏しい話が多いからです。我々は、そのような学会などの発表を「チャンピオン・データ」と呼んでいます。つまり、たまたま得られた、再現性の無いデータと言う意味です。信頼性や再現性も分からないデータなどを聞いても、生産現場では役には立たないのです。事実、学会発表と市販された有機ELでは特性が極めて乖離しています。学術的にはそれで良いと思いますが、企業は実用化してなんぼの世界です。

 

城戸:
私は30社近い会社と適切、不適切な関係にあります。あなたもご存知な様に、企業では実用化に近づけば近づくほど発表を控えます。最先端のおいしい技術など、学会では発表しないのです。他社に教えないのです。公にされている有機ELに関する情報など、私の知る情報のほんの一握りでしかないのです。その辺が、一企業人で展示会や学会発表でのみ情報を得ておられるあなたと違う点です。私にはハッタリを言う必要もありませんし、誇大広告を打つ必要もないのです。単純に、この分野の発展を願い、可能な範囲で最新情報を公開しているだけです。

 

 

加瀬氏いわく:
効率の数値を意図的に弄ぶからそういう事になります。有機ELは、寿命や発光効率が発光輝度に敏感に依存しています。ですから、1000cd/m2の発光時のデータを基準に、データを統一されてはどうでしょうか。TFTLCDでは、12インチクラスで100cd/m2出しても全消費電力は2Wで十分です。10"以上の大型有機ELパネルで2Wを実現したことがありますか?発光しているかどうか分からないような領域での発光効率を論じて何の役にたつのでしょう。また、LCDでは、冷陰極管が安定して点灯しているから電源変動が少ないと言うメリットもあると言う事実を知っていますか?バッテリー駆動では、画像によって電力消費量が変動すると電源ノイズの原因になりやすいのです。

 

城戸:
現在、JEITAで有機ELディスプレイの標準化作業を進めています。これまで、研究機関によって寿命の評価法、効率の定義など、標準化されます。ご心配なく。

 

 

加瀬氏いわく:
TV画像であろうとなんだろうと、基本的に、静止画像は必ず存在します。それに、焼き付きは発光型ディスプレイの宿命ではありません。CRTでは、数万Vに加速された電子が蛍光体に当たっても、10年以上にわたって快適な映像を表示しています。

 

城戸:
はい。CRTは偉いです。あの安さで、あの高画質、あれも究極のデバイスの一種と認めます。けど、CRTを薄くしたナショナルのフラットテレビは高すぎて売れませんでしたね。消費者のニーズにあってなかった一例です。高いとダメなんですよね、結局。

 

 

加瀬氏いわく:
PDPでは、プラズマで、まず紫外線を発生し、その紫外線の照射で蛍光体が光るわけですが、無機蛍光体の基本構造は同じであり、紫外線のエネルギーが数eV であることから、蛍光体の寿命は問題になっていません。数万eV以上に加速化された電子の衝撃でも、階調表示に影響を受けず10年以上も安定した表示ができているのが、現在生き残っている蛍光発光型ディスプレイの基本材料なのです。

 

城戸:
あれれれ、加瀬さんはPDPのことボロカスに言ってたんじゃないの~。

 

 

加瀬氏いわく:
私は有機ELの将来性を語っています。「安かろう悪かろう」を自認した戦略を展開するというのであれば反論はありません。また、昔からSTN-LCDは駄目と言う声はありました。だから、今のTFT-LCDがあるのです。論理が逆ですね。

 

城戸:
有機ELは、安かろう、良かろう、です、何度も言うようですが。CEATECでソニーの13インチ見ました?あんなの、液晶でできます~?見に来てた一般客が、スゲ~、スゲ~と感嘆の声あげてましたからね。液晶じゃこんなに驚きませんよ。

 

 

加瀬氏いわく:
また、先月、東京のタクシー乗りましたら、東北パイオニアの青緑の有機ELディスプレイでニューステロップを流していました。まあ、3~4年ぐらい前のものでしょうか。一番上のラインと2番目のラインで、輝度に50%くらいの差が発生していましたよ。

 

城戸:
それ、有機ELじゃないです。どこかの蛍光表示管でしょう。あれは、加瀬さんのおっしゃる最強の無機蛍光体を使ってながら劣化する、安かろう悪かろうの代表のようなデバイスですから。

 

 

加瀬氏いわく:
じゃあ、何故パッシブを作るのですか?私の疑問は、出力する光エネルギーの量は変わらないのに、駆動法によって寿命が変わる半導体素子なんて聞いたことも無いものですから。まあ、液晶は直流と交流では変わりますがね。

 

城戸:
液晶だってTFTが無かった頃はSTNじゃないですか。なぜパッシブを作るのかって、液晶の歴史を振り返ればわかることですよね。

 

 

加瀬氏いわく:
Dr.Kが言ったとは言ってません。しかし、Dr.Kは、NECの有機ELは30cd/m2で室内では良いが屋外では辛いと認めているではありませんか。NECはそれでも良いと考えたから商品化したのではないのですか?論より証拠です。

 

城戸:
NECの今回のパネルはパイロットプラントで試作したものです。枚数も限られており、試験的に出荷したものです。ですから、N2001をNECでは、有機ELパネル搭載ということをウリにはしておりません。ですから、有機EL関係者間でも、有機ELの評判が下がるからやめてくれという声も一部ありました。しかし、マスク蒸着でRGBの塗り分けが出来ることを示したこと、画質の点で液晶を上回ること、一般のユーザーが液晶より好んだこと、などを示した点で功績は大きいと考えます。

 

 

加瀬氏いわく:
大分、晩酌が進んでおられるようですな(^^)、PDPは知りませんよ。30年間研究して、発光効率は全然進化の無いデバイスですからね。

 

城戸:
すまぬ、すまぬ。晩酌しなくてもこの調子でね。
やっぱり、PDPは素性が悪いですか。

 

 

加瀬氏いわく:
再三申し上げますが、私は有機ELの将来性を語っています。10000cd/m2で10000時間の有機ELデバイスができたですか?では、その時の発光効率はどうなのですか?再現性はあるのですか?誰と誰が再確認したのですか?何回作って何回、同一のデータが得られたのですか?チャンピオンデータでは商品は作れませんよ。それに、RGB揃っているんでしょうねぇ。それでは、一日も早く大型TVを見せてほしいです。

 

城戸:
あ~~~~~~、早くお見せしたい。
チョット、待っててくださいね。いろいろ事情があるもんで。

 

 

加瀬氏いわく:
細川さんと言うは知りませんが、有機ELで大型TVを作る夢をもっていれば、道の厳しさをご存知のはずですから、怒るとは思いません。

 

城戸:
ウッソ~、細川さん知らないの?
細川さんというのはね、本名、細川地潮さんと言いましてね、有機EL三羽ガラスの一人です。推定年齢43±1歳、出光興産で有機ELの研究をかれこれ15年程続けておられ、有機ELの発展にもっとも尽くした企業人のひとり。私が認める数少ない有機EL人。多くの電機メーカーとつき合いがあり、有機ELの裏の裏の裏、ホクロの位置まで知り尽くすその道の達人でもある。有機EL人材不足の今日この頃、この人だったら年収3500万の価値あり。

 

 

加瀬氏いわく:
じゃあ、物を出して下さい。チャンピオンデータではないと言うことを証明するべきでしょう。展示会の有機ELのデモで、初日と最終日では赤色部分がオレンジに変わっていることもありますよ。例えば、LCD Internationalで東北パイオニアがCGS駆動していたパネルは、最終日に見たせいか、相当オレンジが強かったように思えましたがねぇ。

 

城戸:
あ~~~~、言いたいな~。有機ELの裏を知る人は皆知ってるんですよね~。ある企業ですでにこのレベルに達してるのを。あそこは学会発表しませんから、私の口から言えません。何度も言うようですが、発表されてるものは最先端ではないですから。

 

 

加瀬氏いわく:
コダックは自社での開発を諦めたのですよ。

 

城戸:
コダックにディスプレイが開発できる訳ないじゃないですか。加瀬さん、ディスプレイ開発にかかわられてきて、化学屋に出来るもんじゃないことをよくご存知でしょう。

 

 

加瀬氏いわく:
そこで、アメリカ国内の半導体メーカー、例えばIBMなどに売り込みに行ったのです。ところが、どこも相手にしなかった。だから、日本に売り込みに来たのです。ところが、半導体メーカーは、アメリカと同様、相手にしなかった。つまり、半導体を知っているから慎重だと言っているのです。

 

城戸:
どんな、条件で売り込んだか知ってます?
大手半導体メーカーは自社だけで開発でき、コダックとわざわざ組む必要がなかったから断っただけ。これ、業界通なら誰でも知ってます。

 

 

加瀬氏いわく:
また、私は、先月、有機ELを始めたある半導体会社のオエライさんに、「何故、今更、有機ELなの」と聞いたら、「投資が安いからね」と言うことでしたよ。私は、物にならなくても実害は小さいと言う意味に受け取りましたがねぇ。

 

城戸:
投資が安くて、低コストで量産できる、非常に素性のよいディスプレイである。こういう意味です。同じ言葉でも受け手によってこんなに違うもんですかね。

 

 

加瀬氏いわく:
ほほう、装置のせいにするのですか?TFTLCDの基板サイズの大型化において生産性の向上の素晴らしさを見ていますと、装置メーカーの能力の高さには感心しますよ。また、電子デバイスの生産は、原理、材料、構造、製法、装置の順でやさしくなると思っていま 
すよ。

 

城戸:
ありゃりゃりゃ、何もご存知無いのですか。これまで、有機物を蒸着で積層する有機デバイスの量産なんて装置メーカーは経験無いんですよ。装置メーカーも手探り状態なわけです。

 

 

加瀬氏いわく:
有機ELでは、何故、装置ができないのかと言えば、装置メーカーに発注できるほど技術が確立していないからですよ。材料、構造、製法が全く未完成だから発注できないと言うのが真相ではないのですか?日本の装置メーカーはトップ自らが、有機ELの量産装置の売り込みにアジア各国を飛び回っているんですよ。

 

城戸:
東北パイオニアでは歩留まり95%以上で量産しています。技術が確立してなかったらこんな芸当できんでしょう。
それから、トッキに有機EL量産装置を発注してみてください。ウェイティングリストの末席に名前を載せてくれるでしょう。ここの装置、飛ぶように売れてますよ。東南アジア飛び回ってるのは、たぶん素性の悪いxxxxxでしょう。

 

 

加瀬氏いわく:
私もTFT-LCDが万能だとは思っていませんよ。

 

城戸:
でしょ、でしょ、でしょ。

 

 

加瀬氏いわく:
だから、未来のディスプレイを探しているのです。

 

城戸:
有機ELですよね。やっぱし。

 

 

加瀬氏いわく:
私は、有機ELのガラス軟化点が200℃でも不安ですがねぇ。Dr.Kは電子を動かすだけだと軽く言っていますが、導電体と半導体の電子の挙動を知らないのではないですか?

 

城戸:
あの~、これは液晶が分子の配向を変える必要がある、すなわち分子を動かす必要があるのに対して、有機ELでは分子は動かさず、電子を動かす、と言ってるだけです。動作速度の速さ、環境温度への対応性を比較してるだけです。

 

 

加瀬氏いわく:
400nmの光を出すには電子と正孔は約3eVのエネルギーで再結合しなければなりません。しかし、発光に寄与しなければフォノンに変わるしかないですが、電子の3eVのエネルギーが熱(3万5000度程度でしたかね?)に変わることを考えると、分子の安定性に不安が残ります。無機半導体の発光素子では、熱伝導性の良さから放熱で逃げることもできますが、有機分子は、放熱板に熱が伝わるパスでダメージがあると思うのです。私には、有機半導体は、電子-正孔の再結合で発生するフォノンの衝撃に耐えることが、基本的な物性として可能なのかどうかという疑問があるのです。

 

城戸:
有機ELは発光分子のエネルギーギャップで発光が開始し、内部量子効率(電子から光子への変換効率)はリン光材料を使う系では、ほぼ100%です。さらに、ディスプレイに使用する輝度レベルでは熱による有機分子の変性はまったく問題ではありません。ただ、レーザー発振させるにはまだ低温で放熱させる必要はありますけどね。

 

 

加瀬氏いわく:
1日の使用時間も短くて、3年持てば後は知らないと言うデバイスが売れるとお考えの方であれば、熟睡できるでしょうけどねぇ。

 

城戸:
揚げ足を取らないでね。だれも、3年もてば後は知らないなんて言ってませんよ。何回も言うようですが。

 

 

加瀬氏いわく:
私は、そのようなデバイスの開発経験はありません。おそらく、世界中の電子デバイスの研究開発者は、誰一人考えつかないことでしょう。Dr.KはNECが何故30cd/m2にしたかを分からないでしょう。しかし、我々、同業者には良く分かるのです。NECは、たとえ30cd/m2では屋外で多少見難いと言われようとも、NECの技術者の名誉のために、3年しか持たないような製品を世に出すことはできなかったのです。

 

城戸:
あれは、3年も持たないと思いますよ。だから試験的に出しただけなんですよ。それに、NECの内部事情は加瀬さんよりよく知ってると思いますけど。

 

 

加瀬氏いわく:
研究開発では、まず素材を考えますが、物性の安定性が第1なのです。半導体でもGeが最初に表れましたが、物性の安定性から、結晶などの製造が多少難しいけれども、Siに主流が移ったのです。

 

城戸:
当然ですよねえ。有機ELでもより安定な材料が開発され、古い材料はどんどん取って代わられます。

 

 

加瀬氏いわく:
見解の相違でしょうが、TFT-LCDについては、画品質が完全に実用レベルに達したと言うのは、今年のSIDでも言われましたし、LCD InternationalなどでのLGやシャープの30"TVの評価も高いです。三星の40"TFTLCDは継ぎ目が見えて今一でしたがね。どのようなデバイスがエレガントであるかどうかはDr.Kの主観ですが、液晶TVが爆発的に売れ始めていると言う客観的事実もお認め下さい。売れると言うことは、Dr.Kが主張された「消費者の要求を満たす」ことができているたわけです。

 

城戸:
液晶屋さんが自画自賛したところで意味はありません。私の友人の吉川(きっかわ)という法律事務所に勤めるディスプレイのド素人は液晶が大嫌いで、早く有機ELモニターを実用化せよと私に迫ります。実際、家電量販店でCRTの横に置かれた液晶テレビの画質の低さには驚くべきものがありますよね(日本語としてチョットおかしいか)。少なくとも私とド素人の吉川は今の液晶を実用レベルとは考えておりません。売れてるのは、目新しい物好きの小金持ちが日本には多いからですよ。それだけ。あんなもん、欧米じゃ売れません。すぐに市場は飽和するでしょう。過度な期待はしないようにね。シャープさん。

 

 

加瀬氏いわく:
消費電力では、有機ELでも12"クラスで2Wのものを作ってから再議論しましょう。500cd/m2で10年使って問題ないTVを有機ELで達成されることを祈っています。現在、30"クラスのLCDが高いのは、メーカーの政策のせいです。15"などの量産品では既に250ドルで出荷されています。対角1"当たり10ドル台になっているわけです。極めて近い将来に、30"でも20万円を切った店頭価格が実現するでしょう。有機ELでは、何時のことでしょうか?

 

城戸:
有機EL関連企業のみなさん。頑張ってくださいね。
私と加瀬さんは祈ってます。

 

 

加瀬氏いわく:
Dr.Kは、携帯電話の有機ELとLCDを並べて視野角の差を写真で紹介されていますね。しかし、携帯電話のLCDに視野角があるのは、携帯電話屋さんの要求のためであるのをご存知ないのです。携帯電話屋さんは、パネル輝度をいくらにすれば良いかの定見がありません。ですから、バックライトをM社が1200cd/m2にしたと聞くと1500cd/m2を持って来い、N社が1500cd/m2にしたと聞くと1800cd/m2を持って来いと言った調子なんです。しかし、「光源を明るくするのには限界がある」と言うと前方向に光を集光してでも良いから持って来いとなるわけです。動画は明るいほど綺麗に見えるので明るくすることが一番と考えているからですね。その結果、正面輝度は200cd/m2近くまで上がっています。もし、携帯電話屋さんが、パネルの表面輝度は50~100cd/m2程度で良いから視野角を重視してくれと言ったら簡単に対応できるのです。Dr.Kは、そのような市場の現状を知らないのですね。

 

城戸:
あのね~、そんなこと誰でも知ってますよ。うちの研究室なら学部4年生でも知ってるんじゃないかなあ。
ピーク輝度が出ない、低い、これって液晶の最大の欠点の一つですよね。すなわち、液晶はバックライトが出せる輝度によって、パネル輝度に限界があって、高輝度化するために何かを犠牲にするということ、たとえば視野角ね。それに対して有機ELは輝度レベルにかかわらず常に高画質であること。あの写真はそういうことを示してるとも言えますよね。

 

 

加瀬氏いわく:
Dr.Kは、別のページで「三洋電機がKODAKと排他的な提携を結んだ」ことにも怒っていますね。そして、KODAKの特許はもう直ぐ切れるのにと提携に疑問を呈しています。しかし、業界関係者の意見は異なります。三洋電機は優れた技術を持っています。余り派手では有りませんが、日本の半導体産業の創生期にはRCAのディビッドサーノフ研究所に技術者を送り込むなど、半導体技術でも老舗の会社です。技術哲学も確立しています。ですから、KODAKの特許が何時切れるかなどと言うことは百も承知です。ですから、業界筋では、「KODAKが状差しに差してあった宝物を三洋電機に見せ、三洋電機がそれが宝物と認めた」のだろうと言う見方があることをお教えしておきます。

 

城戸:
どこの業界筋か知りませんが、お気楽なもんですね。コダックの特許ライセンスの条件知ってます?
それから言っときますけど、私は三洋の技術力は素晴らしいと認めていて三洋のファンでね、三洋の株主でもあり昔から応援してるんですよね。研究所の浜田さんの人柄最高だよ。だから、正直、コダックとの排他的な提携には複雑な心境なんですよね。

 

 

加瀬氏いわく:
Dr.Kは、自身の出した特許に自信があるようですが、おそらく金に替わることは無いと思います。日本で最もノーベル賞に近いと言われる東北大の学長だった西澤潤一先生も「日本企業は核心特許にさえも金を出さない」と嘆いていられるほどですからね。日本の製造業が弱くなった一因ですが、日本メーカーは「1億の特許料を払うくらいなら、10億使ってでも、別の技術で回避する」社会なのです。

 

城戸:
じゃ~、どうしてコダックに金払うの?おっしゃってることが矛盾してますよ。だいたい、西沢先生の頃と今を比べること自体ナンセンスですよ。それに、私の特許、すでに使用されてて特許収入があります。ご心配いただかなくて結構ですから。 
それから、ノーベル賞に一番近いのは中村さんじゃなかったんでしたっけ。中村さんご存知ないですか?

 

 

まとめ:
いや~、これじゃ読者を喜ばせてしまいますよね。また、城戸が怒ってるってね。まあ、有機ELオタクの私としましては、これをケナサレルと単に腹が立つというだけの極めて単純な理由で、好き勝手なことを書いて反論させていただきました。
ただ、これ以上議論がエスカレートすると、私は実名、所属、風ぼう、まで明らかになっているのに加瀬さんは、どこの誰だかわからぬ人、ちょっとフェアではないので、私の方はこの辺にしときます。もし、議論を続けられるなら、私にこそっと、本名と所属を明かしてもらえぬでしょうか。もちろんヒミツにしときますから。それから、もし来年のSIDに行かれるなら是非お目にかかって一杯やりながら議論させていただきたいもんです。
是非、ご連絡ください。楽しみにしております。

ページトップへ