• 日本語
  • 英語

城戸・笹部・千葉研究室

城戸の独り言

2001年01月19日
海外の歩き方(中)

 ここは成田からフランクフルトへ向かう飛行機の中、そうです今日も海外出張です。ここのところ海外出張続きで、日本にはほとんどいないんですよねえ。飛行機の中ではウイスキーなんかをチビリチビリとやってたりして脳がマヒしてましてね、できることといえばこんなバカ文を書くことぐらいですか。

 さて、今回は海外の歩き方(上)に続く、中編です。もし、まだ(上)を読んでない人がいたら、まずあちらを読んでくださいね。前回は現地に到着したところで終わりましたので、今回は現地編です。現地で私が遭遇した数々の失敗談、笑い話をご披露しましょう。

 
 まず、空港からボッタクリタクシーにも乗らず無事ホテルに到着したあなたは、チェックインするわけですが、フロントでは名前を告げ、パスポート、クレジットカードを差し出します。これには英語力は必要ありません。旅行の前にホテルの予約を済ませてるはずですから普通はこれでノープロブレム、すんなりと部屋の鍵を手に入れられるはずです。しかし、万が一、何らかの手違いであなたの部屋が予約されてなかったらどうしますか?私の場合、以前こんなことがありました。


 数年前に、アメリカはミネアポリスでの会議に参加したときのこと、学会指定のホテルに予約するのを出発の一週間前まで忘れてましてね。通常、学会指定のホテルは宿泊料金が通常の6掛けぐらいで、普段なら一泊3万円もして助教授の安月給じゃ泊まれない様なホテルでもこんな機会には泊まれちゃうんですよ。けど、予約の期限があって、たいてい遅くとも一ヶ月とかに予約しないと、通常レートになってしまうわけです。会議の会場になってるような場合は、すぐに満室になってしまうことも多いですねえ。ですから、一週間前に予約してもまず部屋がとれることはありません。しかし、とりあえず指定の様式でファックスしておいて、当日フロントで、私の名前と参加学会の名前を告げました。すると、フロントのお姉さんは学会参加宿泊者リストを取り出してしばらく見つめていたと思うと、「ソーリー、あなたのお名前はリストにありません」ときた。やっぱっしなア。


 しかしここで引き下がっては、よそのホテルを探すか野宿するしかないわけで、簡単には引き下がれませんよねえ。そこで、試しに、ちょっときつい口調で、「そんなはずは、ありません。私は予約のファックスをきちんと入れましたよ!」と、キッパリと言うと。「そうでしたか、それでは私どものミスに違いありません。今部屋があるか確認いたします。」と、部屋を探して見つけてくれた。探せばあるんですよね部屋の一つや二つ。だから、皆さんも万が一の時には最後まであきらめずに、どうどうと交渉してください。日本政府のように外国相手だとつい及び腰になるということではいけません。


 日本のビジネスホテルでは、たいていシャンプーや石鹸以外に歯ブラシや歯磨きが備わってますよね。けど、外国ではシャンプーや石鹸はあるものの歯ブラシと歯磨きはありません。ですから、これらは必須アイテムと考えてください。忘れたら、ホテルの売店か近所のドラッグストアで購入できますけどね。
 昨年のことなんですが、学生と東海岸を旅行したときのこと、そのうちの一人の伊藤君("上"でも登場した)が、ホテルに着いて歯磨きを忘れたことに気がついたんですよ。そこで、彼は近くのドラッグストアに一人で買い物に行き、歯磨きを買ってきました。初めての海外旅行なのに、なかなかやるよねえ、ここまでは。ところが、翌朝、歯を磨いていると、どうも歯と歯がくっついて仕方がない。なんだかネバネバ、ネチャネチャしてしまいには歯と歯がくっついて離れなくなってきた。ニッチモサッチモ行かなくなってから、これはちょっとオカシイんではないかいと、買ってきた歯磨きらしきものをよくよく注意して見ると、なんとそれは入れ歯固定剤でした。バーカ。歯磨きがTooth Pasteということぐらい、中学生でも知ってるのに、悲しいかな伊藤君の英語力はそれ以下ということが判明してしまいました。皆さんはそんなことありませんよね。


 さて、初めて海外に行くに人にとって日に三度は直面する問題は食べることではないでしょうか。レストランに入りづらい、どうやって注文したらいいかわからない、どのレストランがオイシイかわからない、まあこの三重苦が揃えば、まあいいや、マクドナルドで、ということになってしまうわけです。うちの学生も野放しにしますとすぐに楽な方へと流されます。しかし、せっかく海外に来てるわけですからやっぱり地元のおいしいものを食べたいですよね。


 レストランの探し方としては、皆さんがよく利用するのがガイドブックでしょうか。でも、これ、けっこう失敗することがあるので気をつけてくださいね。たとえば、「xxぶ」って結構有名な大手旅行社が出版するガイドブックがありますが、これで痛い目に合わされたことがあります。

 以前、10名ぐらいのグループで欧米に視察旅行に行ったことがあります。私以外は企業の人でその一人、望月さん(仮名、メーカー勤務、推定54才)がちょっとしたトラブルメーカーだったんですよね。ロンドンでのこと、ヨーロッパについてまだ3日ほどしか経っていないのに、この人がラーメンだ寿司だ日本食だと言い出して、その日の夕食は望月さんのたってのご要望で日本食レストランに行くことになってしまいました。顔には皆、せっかくロンドンに来たんだからロンドン名物(?)を食べたいよう、と書いてあったんですけどね。結局、押しが強くて一度決めたら一直線の望月さんの意見が通ってしまったんですよ。そこで望月さんが手提げカバンから取り出したのが、娘さんから借りてきた「るxx」というガイドブック。この「xるx」によるとピカデリーサーカスってロンドンで一番の繁華街に"チープシック"な日本食レストランがあり、リーズナブルな値段で寿司とかラーメンが食べられるって紹介してあるんですよ。名前は忘れたけど、ちょっとうさんくさい名前だったんですよね。
 

 地図をたよりにそのレストランに到着すると、外見は小僧寿司みたいなテークアウトのすし屋みたいでね、週末で周辺のレストランには長い列ができているのにそこだけはガラガラ。ヤバすぎますよね、これって。普通ならそこで考え直して他のレストランを探すんですが、望月さんの胃にはすでに寿司用の胃液(そんなんあるんか)が分泌しているらしく、なんの躊躇もなくズカズカとレストランに入っていきました。一階はカウンターがあって、テーブル席が地下にあるということで、しょうがないから我々もついて階段を下りると、ホントににチープな作りでシックじゃない内装で、経営者も中国系らしく、飾り付けも何から何までいわゆるニセ日本風レストランでしたよね。


 二つのテーブルに分かれたんですが、運悪く私は望月さんのテーブルで、そこでも望月さん、メニューを手に取り、親切にも刺し身とか寿司とか我々の分まで注文してくれました。普通だったら、ビールでも飲んでとっとと場所を変えようと軽くおつまみ程度注文するのに、望月さんにはそのようなお考えは一切ありませんでしたね。隣のグループはほんとに軽く注文されてましたよねえ。こんなチープな店ですから、出てきたものもええ加減なもんばっかりで、刺し身と言っても寿司のネタをそのまま盛ってあるだけだし、青田さん(仮名、メーカー勤務、推定38才、独身、花嫁募集中、趣味は株)は、「刺し身ラーメン」という日本ではお目にかかれないようなものをメニューに見つけ注文したところ、でてきたのは小皿に盛られた寿司ネタとまずい醤油ラーメンでした。他のメニューもこんな調子で、ほんとロンドンでの貴重な夕食一回分と支払った代金一人約5000円を返せと言いたかったですよねえ。「xxぶ」の記者はここで実際に食事をしたのか!、なにがチープシックだ!、と言いたい。読者の皆さん、このガイドブックと望月さんには気をつけましょうね。


 では、普段は私自身どうやってレストランを探すかというと、その国内で出版されてるガイドブックにたよります。アメリカでしたらZAGATですよね。最近、東京バージョンも出版されててご存知の方も多いかもしれませんが、ここのガイドは結構信頼できますよね。味とか雰囲気とかサービスでレーティングしてあり、味なら20点以上でしたらいい部類に入ります。最高で26~7点でしたかね。私は結構これを頼りにレストランを開拓して、気に入ったところを行きつけにしたりしてますね。アメリカの大都市ならだいたいあると思います。ガイドブックの無いところなら、地元の人、たとえばホテルの従業員なんかに聞くのもいいですし、自分の動物的なカンで探すのもいいですけどね。だいたい、おいしい店ははやってますし、何とも言えない雰囲気ってのがありますよね。


 食後にはバーで一杯というのが大人の夜の過ごし方ですが、ちょっとした注意が必要ですので失敗談を一つ。前述の望月さん、ロンドンでチープシックな食事を楽しんだ後に、ジャズクラブでも行きましょうと言い出したんですよ。私もニューヨークではジャズクラブにはよく行きますし、嫌いなほうじゃないんですが、なんせ望月さんの言うことだから、何となく信用できなくて、最後に大どんでん返しがあるようで、一緒に行かなかったんですよね。結局、この話には人のいい青田さんだけが付いていくことになりました。この後は、青田さんから聞いたその夜の出来事です。


 知ったかぶりの望月さんに付いていくはめになった青田さん、ズンズン歩いていく望月さんの後を着いて行くと案の定、道に迷った。そして気がつくと、そこはなんだかうさん臭い匂いのするネオン街、美人のお姉さんがオイデオイデしているバーがあるじゃありませんか。普通なら入りませんよねえ、知らない町でしかも呼び込みのあるバーですよ、よく聞くボッタクリバーみたいじゃないですか。しかし、スケベな望月さん、ちょっと一杯やっていくか、なんて言いながら青田さんの意見も聞かずに、そのお姉さんの店に入っていくではありませんか。


 ところがドアを開けるとそこにはソファが一つだけぽつんと置いてるだけで、何もない。ナンヤこりゃ。そこに座らされたお二人さん、両わきに女性が座ったものの気が気でない。とりあえずビールを頼むとお姉さんたちも、私たちもビールいいでしょ、ネッ、ネッ、なんておねだりする。そこで、金には細かい望月さん、注文するものの値段をとりあえず一つ一つチェックはしてたとのこと。オツマミなんかも次々注文しようとするので、こりゃさすがにヤバイと思った望月さん、席を立とうとして差し出された請求書を見てオシッコちびりそうになった。日本円で6万円。切れちゃった望月さん、請求書を持ってきたオバハンに流ちょうではない英語で文句を言って、そのままお金を払わずに店を出ようとすると、スッと脇から出てきたでっかいプロレスラーのような黒人のアンちゃんが出口を塞いだ。これで完全に頭がパニック状態になり、壊れちゃった望月さん、ボーゼンとソファに座っている青田さんを放ったらかして、自分だけ逃げようと、2度、3度、黒人のアンちゃんに突進したとか。その時の様子を青田さんは、まるで小学生が小錦にかかっていってるようであった、と述べている。


 結局、こりゃヤバイと思った青田さんがマアマアマアと間に入り、自分のポケットの有り金全部はたいて店を出してもらったとのことでした。笑えるのがこの後で、意気消沈しながらもホテルになんとか戻ったお二人さん、望月さんが青田さんをバーに誘い、今日のことは皆に黙っていようなと、口止め料としてビールを一杯おごってくれたそうです。もちろん、青田さんの立て替えた6万円については全く触れずにね。踏んだり蹴ったりの青田さん、その夜のうちにこの話は全員に知れ渡ってしまいました。

 

みなさん、国内外を問わずきれいなお姉さんと望月さんには気をつけましょうね。


つづく。

ページトップへ