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城戸・笹部・千葉研究室

城戸の独り言

2006年04月18日
海外の歩き方(下)

  海外の歩き方(上)が2000年3月23日で、海外の歩き方(中)が2001年1月19日ですから、ずいぶんのご無沙汰で、今回が最終回です。実は、今、サンフランシスコにおりまして、しかも時差ボケで現地時間の夜中の2時と言うのに全然眠くなくて、久しぶりに「ひとりごと」アップしようと思ったわけです。
 なぜ、サンフランシスコにいるかと言うと、毎年4月にアメリカのMaterials Research SocietyのSpring Meetingが当地で開催されるからです。ですから、この時期のサンフランシスコはもうかれこれ十数回目でしょうか。カリフォルニアの青い空がとってもきれいで、天候は日本の春先のような天気が続き、快適、の一言ですね。
 実は、今回の出張には、私以外に学生4人も発表のため連れてきているのですが、出発時からちょっとしたトラブルがあったので、それを披露しながらその対策方法を海外旅行初心者の読者の方々に伝授させていただきたいと思います。ですから海外旅行エキスパートの人は読む必要はまったくありません。

 

 まず、最初は米沢駅にて、二人の学生の持ってきたカバンを見て注意をしました。なんと、新婚旅行に持って行くようなバカでかいトランクを引っさげてきたのです。日ごろから、外国出張する学生には、機内持ち込みできる「キャリーオン」サイズのカバンを使うようにと注意していたのですが、その注意が先輩から伝わっていなかったようです。
 なぜ、カバンを機内に持ち込むかと言うと、まず、「カバンが行方不明にならない」からです。特に乗り継ぎがある場合は、空港の手違いで身体とカバンが別れ別れになることがあるのです。奥さんと別れて喜ぶご主人はいても、カバンと分かれて喜ぶ人はいないと思います。私自身はありませんが、カバンが行方不明になった可哀想な人を何人も見ています。ビジネス目的の出張であれば、仕事にも差し支えてしまいますしね。
 それに、到着時にターンテーブルでカバンをピックアップする必要がなくて、無駄なく時間が使えます。また、乗り継ぎ便がある場合に、到着が早くて早い便に乗れる場合など、カバンを預けていなければ、その場で便を変更できます。機敏に行動できるわけですね、だから、カバンは「キャリーオン」サイズ、がビジネスマンの間では常識なのです。

 

 まあ、それぐらいはいいとして、問題はこれからです。夕方6時発のユナイテッドアメリカン航空(仮名、以下UA)に乗るべく、米沢を12:40ころの山形新幹線で発とうと考えていたわけですが、朝10時ころにUAから旅行代理店、そして私の方に「フライトがキャンセルになった。翌日の便に乗って欲しい。」なんて連絡があったわけです。2~3時間遅れる、なんてのはザラですが、キャンセルでしかも翌日の出発を一方的に言い渡されたわけですから、日ごろ「人間コアラ」と言われるほど温厚でおとなしい私も怒ったわけです。なにせ、予定では着いた翌日からオーガナイザーを務めるシンポジウムが始まり、私自身の講演も初日にあるわけですから、一日とて遅れることは許されないからです。


 さて、こんなときあなたならどうしますか?


 海外旅行エキスパートである私のとった行動は、次のようなものです。まず、UAに電話しました。当然ですね。そして、電話口の担当者から事情を聞きます。どうも、機体が始発のシンガポールかどこかで故障して成田到着が20時間ぐらい遅れるようで、正確にはキャンセルではなくて21時間の遅れ、ということでした。これも異常ですけどね。
 まず、サンフランシスコに行くためにロサンゼルス経由でも、シアトル経由でも、ホノルル経由でも、とにかくサンフランシスコに行かなくてはならないので、そういうフライトに変更するように求めました。成田~サンフランシスコは直行便ですが、私にとってはとにかく着ければいい訳で、当然の要求です。しかし、電話口の女性は、調べもせずに「他の便にもまったく空きはありません。出発を明日にしてください。」と言い張ります。実は、UAは一日2便を成田からサンフランシスコに飛ばしており、もちろん早い午後4時発に変更してもらうようにも要求しました。ところが、とにかくどの経路にしても、きょうの便ではサンフランシスコには行けないので明日にするように言い張るのです。


 キレましたね、人間コアラも。


 言いましたよ、「私はビジネスでサンフランシスコに行くのです。一日も遅れることはできません。もし、損害が発生すれば損害賠償請求させていただきますが、それでよろしいですね。」と強い口調でキッパリとやり手弁護士っぽく、言いました。その一言で、担当者は動揺して、「少々お待ちください。空港の責任者に話してみますので、後ほどこちらから連絡差しあげます。」と態度急変。10分後に携帯に電話があり、「4時発の早い便に一席確保できたので、そちらに変更させていただきます。」と一件落着。
 ここでは、「損害賠償請求」というのがミソですね。特に、アメリカでは法的に訴えられるのを一番嫌いますからね。私自身は「損害賠償請求」というのが、何を意味するのか、どういう手続きなのか、全く知らないのですが、経験的に「損害賠償請求」という言葉が、人を動揺させることを知っており、このマジックワードをついつい連発してしまいます。だいたい、私が講演できなくとも誰も損害をこうむるわけじゃなく、「城戸はいい加減なヤツだ」と、他のオーガナイザーや会場の聴衆に思われるだけで、「もともといい加減な人間」ですから、真実であって、実は評判を落としているわけでも、なんでもないわけです。ましてや損害をこうむるわけでもないわけですよね。

 マジックワードを知らない学生はどうなったかと言うと、とにかく「電話ではどうすることもできないので、早く出発したければ、空港の窓口で交渉してほしい。」との返事をうけて皆で予定より早く米沢をでて、成田のUAの窓口に行ったわけです。だいたい、一席も他の便に空きが無いと言うのが、私の件でウソと言うのがバレてるわけで、こういうときはとにかく行動を起こすことです。
 結局は、成田で専用の窓口に2時間並ばされて、交渉始めた時はアメリカ向けの便はすべて出発してしまい、学生は翌日の便でいく羽目になりました。成田空港周辺のホテルと食事券をもらって成田泊ってことですね。ですから、私と学生は成田空港で別れ別れになり、不安げな学生を後に残して私一人、サンフランシスコに出発したわけです。
 ここからわかるのですが、UAとしては、最初から「搭乗便の変更など電話では対応しない。」と決めていることです。そして、空港に来た乗客は、ホテルをチェックアウトした寝るところもない困った旅行者だから、「ホテルと食事のバウチャーを支給して納得させる。」ということです。ですから、どうしても当日出発しなければならない人は、とにかく、なにがなんでも電話口で責任者レベルに話しを持って行き、その場で席を確保することです。さもなければ、出発の遅れ、は免れません。もちろん、当日のキャンセル待ちを含めて、空港に行けばなんとかなる場合があるので、できるだけ早く空港窓口に行くことも極めて重要ですね。
 ちなみに、学生たちは無事翌日にサンフランシスコに到着しました。心配していたので午前遅く学会会場で出会った時はHugしてあげようかと思いましたが、ちょっと気持ち悪いので、やめました。また、その日夜にポスター発表も無事行い、めでたしメデタシでした。彼らにとっては、成田をでて、ホテルのベッドに潜り込むまで、とても長い一日だったようです。
 
 ホテルと言えば、アメリカでは日本と違い一部屋いくらで宿泊料金が決まっています。ですから、二人でも三人でも一部屋に詰め込めば一人当たりの費用は少なくなくわけです。日本では一人当たりいくらで宿泊料金が決まっていることが多く、無理してツインの部屋に二人泊まってもあんまり安くならないですね。
 今回は、うちの学生はなんと4人で一部屋という荒技にでまして、格安に挙げようとしたんです。ところが、ホテル側が用意したのがダブルベッドが二つの部屋。ということは、男性二人が同じベッドで寝なければならず、そういう目的で泊まられる場合にはよろしいのですが、そうじゃない場合にはちょっと遠慮したいような状況になってしまいました。学生たちが、組み合わせをどう決めようかと相談している時に、私が「ジャンケンで買った人がパートナーを選ぶ」と、提案したんですが、これは即却下されました。どうなったことやら。
 ちなみに、ふつうは3人以上で泊まる場合には、二つベッドのあるツインの部屋に簡易ベッドを入れてもらいます。簡易ベッドは英語では「Roll Away Bed」と言いまして、折りたためるベッドのことです。ですから、予約する時に、Roll Awayをいくつ欲しい、とリクエストすればいいわけです。部屋によってはRoll Awayが入らない部屋もありますので、単に一部屋3人、とか4人とかで予約すると今回のようになりかねませんのでご注意を。
 

 ところで、サンフランシスコといえば以前こんなことがありました。


 数年前に学生を連れてきた時のことですが、その中の一人がフィッシャーマンズワーフ近くでトイレに行きたくなったので、有料トイレに入ったのです。観光客の多いサンフランシスコには電話ボックスのような小さな有料トイレがあるんですね。用を達したその学生は、トイレを流そうとしてまわりを見たんですが、いわゆる「レバー」が見当たらなかったそうです。自動フラッシュなんですね。とりあえず目に付いたボタンを押して出たとのこと。すると、五分くらいしたらパトカーがやってきて、その時にトイレに入っていた外人のおばさんに「職務質問」的にいろいろと聞き始めたんです。どうも、うちの学生は「Emergency」のボタンを押して出てきたみたいで、それに反応してパトカーが駆けつけたってことだったようです。その学生は、そんなこと露知らず、初めて見たアメリカのパトカーをバックにブイサインで記念写真を撮ってました。自分の無知が人に迷惑をかける典型例ですね。アメリカ行くんだッたらEmergencyの単語くらい知っときなさい、マツナガッ!こんなこと繰り返したら、いつか損害賠償請求されるヨ。
 
 さて、最後に帰国の際に気をつけなければならないのは、ターミナルを間違えないことでしょうか。アメリカの空港はでかくて、航空会社別にターミナルがいくつもあります。しかも、international(国際線)とdomestic(国内線)が別々のところもあって、たとえUAであっても、行き先によって場所が違うかったりするんですね。ですから、タクシーで空港に向かうには、きちんと「航空会社」と「international」か「domestic」かをドライバーに告げなければなりません。
 数年前に実際にサンフランシスコであったんですが、学生たちとタクシー2台に分乗して空港に向かったのですが、私たちが着いた後、もう一台がなかなか着かないんですね。ひょっとしてと思ってdomesticのターミナルに探しに行ったら案の定、迷子になった学生がうろたえてました。ぎりぎり搭乗手続きには間に合いましたが、これも中学生なみの英語もできないおバカさんの例ですね。まあ、最近はイトウも少しは英語はできるようにはなったみたいですが…。

 

 それから、アメリカの大都市では、複数の空港があることがあって、たとえば私の住んでたニューヨークにはJFK、ラガーディア、ニューアークの3つ空港があります。ですから、ターミナルどころか空港を間違える場合があります。そして、こういう場合は、取り返しのつかない状況に陥るので、気をつけていただきたいです。
 これもウソのような実話ですが、数年前にニューヨーク在住の私の恩師の岡本先生が知り合いに紹介された日本人3人をニューヨーク観光後に空港に送って行かれた時のことです。二人はJFK発で帰国されるので、まずJFKに向かい、つぎに残りの一人をラガーディアに送って行ったところ、ニューアーク発あることがカウンターで判明しました。あわてて、ニューアークに移動しましたが間に合いませんでした。ラガーディアからニューアークまですいてても1時間以上かかりますからね。結局、英語のできないその人のために、カウンターで翌日の便に変更してあげて、近くのホテルを予約してチェックインさせたそうです。
 岡本先生が自宅に帰られてホッと一息ついていると、その人から電話がかかってきて今度はなんとパスポートやクレジットカード類を盗まれたとのこと。話を聞くと、ホテルの部屋にいると、ノックされたのでドアを開けると作業着を着た男がいて、バスルームを修繕する必要があるとのことで、部屋に入れたんですね。バスルームでしばらくガチャガチャ作業した後、出て行ったそうなのですが、気がつくとソファの上のバッグが無くなっていたとのこと。作業員を装った泥棒ってことです。外国ではよくある話しです。
 結局、岡本先生は、知り合いの知り合いという知らないこの人のために、領事館に一緒に行き、日本にいる家族からパスポート再発行に必要な戸籍抄本類をファックスしてもらったり、クレジットカードも現金もなくしたこの人にお金を貸してあげたり、泊まるところもないので、自宅につれて帰ってパスポートが再発行されるまで1週間も泊めてあげたりで、大変だったそうです。空港を間違えるだけでここまで騒ぎが大きくなることは極めてまれなのですが、ちょっとした確認を怠るだけで他人に大迷惑をかけるので気をつけましょうね。

 

 最後に、帰国の際に空港に時間通りに到着してチェックインしても、フライトが遅れることがあります。実際に、私も韓国から帰国する際に5時間出発が遅れたことがあります。成田から米沢まで帰ろうとしても、新幹線がない時間帯に到着です。この時には、到着後ただちに航空会社のカウンターで、「最終の新幹線に乗れず帰宅できない」、と申し出てホテルのバウチャーをもらって一泊しました。もちろん、次の日に東京で仕事がある人は、自分で予約してあるホテルをキャンセルして航空会社の準備したホテルに泊まると一泊分浮いちゃうわけですね。私がそうしたと言ってるのでありませんので、くれぐれも誤解なきよう。

 

 最後に、海外旅行を楽しむ一番重要なポイントは、「外国は日本じゃない」「日本の常識は海外では常識じゃない」ということを認識することと、「正当に自分を主張する」「泣き寝入りしない」ということでしょうか。それと、もうひとつ注意して欲しいのは、日本人の中には日本人や東洋人には内弁慶でヤタラ偉そうにして、青い目の外国人には弱くてヘラヘラする人が多いこと。以前、仙台から韓国に飛んだ時のこと、機内で一人の日本人ビジネスマンが、やたらスチュワーデスさんに横柄な態度を取るんですね、「あれもってこい」、とか「これしろ」、とか「サービスが悪い」とか、どなったりね。近くで見ていて極めて不愉快でした。この人間コアラがドツイたろかと思いましたもんね。不愉快に思ったのは私だけじゃなくて、入国審査で前に並んだ日本人のご夫婦もそれを見ていて旅行の始まりが不愉快になった、なんて怒ってましたよ。このバカ野郎サラリーマンは年のころなら47±2歳、襟元にはxxxの会社のバッチが輝いてましたよ。東北xxxの人間か。ビジネスクラスで出張するコイツは、この会社でもそこそこの地位にあると思うんですが、誰も見てないと思ってこんな態度をとるようじゃあ、人間性に問題があるのはもちろんのこと、仕事の能力もたかが知れてます。この大きな会社でもこんな薄っぺらな人材しかいないのかと、今リースしているここのコピー機使うのやめようかと思いました。こんなヤツに限って、きっと青い目の外人さんには弱いんですよね。皆さんも、海外に行く時は背中に日の丸を背負ってることを忘れないでください。


 以上、私が経験してきた海外旅行での失敗談を中心に紹介させていただきました。こうやって思い返すと海外旅行という「未知との遭遇」、「非日常を経験すること」によって私自身学んだことは大きいと思います。
ぜひ、皆さんもいい旅行をしてください。

 

一級海外旅行コンサルタント
城戸淳二

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