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城戸・笹部研究室

城戸の独り言

2005年06月30日
選択と集中で技術発信型バレーを

 地方の講演会などで、「これからは地方の時代」などというタイトルを見かけるが、これはウソである。実際に地方に住むと、商店街はシャッター通りとなり、工場が抜け殻になり、町に活気がなくなりゴーストタウン化していくのが実感できる。

 

 この原因のひとつは地方から都市部への人材の流出であることは疑いない。特に首都圏への産業の集中は異常であり、地価は高騰し、サラリーマンは一生働いても家は買えず、交通機関はすでに輸送能力の限界を超えている。

 

 では、どうすれば低予算で効果的に人材を地方に分散して活性化できるであろうか。

 

 それには、まず地方に産業の元となる研究開発の拠点をつくることである。スタンフォード大を中心にしてIT(情報技術)産業が集積したアメリカのシリコンバレーがお手本である。地方自治体はこれまでのように単に工場を誘致するだけではなく、研究所も誘致あるいは自前で設立するのである。たとえば、2年前から山形県でスタートした「有機エレクトロニクスバレー構想」がある。これは山形県が43億円の予算を投入した地域活性化プロジェクトであり、その中核機関として有機エレクトロニクス研究所を自前で設立した。
 ここで研究している有機半導体技術は次世代の半導体技術として期待されており、地元にはディスプレイメーカーや装置メーカー、二次加工メーカーなど、次世代半導体技術を待望する企業が多い。しかも、山形大学工学部では有機半導体を用いた発光素子である有機エレクトロルミネッセンスの先端的な研究を行っているという好条件が整っている。
 このプロジェクトを加速させるためには、県ばかりでなく国もこのバレー構想に大型予算を優先的に配分すべきと思う。国が有機エレクトロニクス研究所および山形大学工学部を有機半導体研究の中心的研究機関と位置づけて大型予算を投入すれば、有機半導体の研究に興味を持つ優秀な研究者は国内外から山形に集まるだろう。すでに、山形大学工学部には全国から有機エレクトロルミネッセンスを目指して学生が集まっているのである。
 元来、研究活動は生活が不規則になるので、通勤に多くの時間を割いてストレスをためるようでは創造的な仕事はできない。ブレークスルーなど生みだせっこない。地方のゆとりある生活環境でこそ研究者の能力が最大限に発揮できるのである。
 研究拠点が地方にできれば、その結果として優秀な人材が全国から集まり、国際化も進むだろう。研究開発の成果が利用されて地元企業は活性化する。基礎技術、部材、量産・組立工場まで一ヶ所に集まると、それを目指してさらに人と金と企業が集まる。まさしく、ものづくりバレーの誕生である。
 しかも、このような技術発信型バレーを地方に構築するには、国は科学技術開発予算を増やす必要はない。単に、ばらまきをやめて、選択と集中を徹底するだけでいいのである。
 もちろん、地方自治体も単に研究だけではなく、企業誘致のために補助金を出したり、法人事業税の減免措置を講じることが不可欠である。その際、国は法人事業税の減免措置を講じる地方自治体に対して地方交付税をその分減らすなどというセコイことをすべきではない。
 すなわち、国がまず地方活性化を推進する態度をあらゆる側面から示すことである。地方が活性化しなければ、国は活性化しないのである。

 


この拙文は、フジサンケイ ビジネスアイ(日本工業新聞)の
「i's eye(ア イズアイ)」というコラムに2005年6月14日に掲載されたものです。

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