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城戸・笹部研究室

城戸の独り言

2004年12月20日
デキル社長とデキナイ社長の見分け方

 先日、韓国に行ってきた。サムスン電子の前社長である李潤雨副会長と会うためである。彼はDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)事業と液晶事業をたちあげて、サムスン電子を数千億の利益をあげる大企業に育て、日本の電機メーカーをコテンパンにたたきのめした張本人である。 
私はこれまで次世代薄型テレビの本命とされる有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイの研究を通して、多くの国内メーカーとつきあってきた。技術力で圧倒的に勝る国内メーカーが、なぜ技術を持たないサムスンにここまで無残にやられたのか。以前から李氏にはとても興味があった。

 

 彼の印象は一言で言うと、土建屋のオッサンという感じである。これはバイタリティーに富み、行動力があって、決断が早い、と言ういい意味である。 
DRAM事業や液晶事業は、信念を持って自分のクビを賭けて大型投資を続け、日本に勝つことを目標に突っ走ったと言う感じである。
 対照的に日本の大企業のトップといえば、町内会長タイプである。会社の規模が大きくなればなるほど、ニコニコ顔の人のいいオジイちゃんばっかり。リーダーシップを発揮するというより、人畜無害な社内の調整役。重要案件はすべて会議で決定するから、無茶はしないし、できない。いつも他社の動向を見ながら投資すればいい。いわゆるサラリーマンの成れの果てであって、経営者とは呼べない。
 けれど、国内企業の技術力はいまだに世界一である。これは、韓国や台湾で使われている製造装置や材料、部品が日本製であり、製造現場で日本人技術者が指導している、ということが証明している。Made in Koreaの製品は、 Made by Japaneseなのである。

 

 だから、国内製造業において「デキル社長とデキナイ社長」を見分けるのはたやすい。業績のいい会社にはデキル社長がいて、悪い会社にはデキナイ社長がいる。ただ、それだけである。
 高い技術力を有しても利益を出す会社と出さない会社が存在するのは、投資の規模とタイミングの違いだけである。これだけ商品サイクルが短くなり、リードタイムの短縮が要求される状況ではグズグズしていられない。何事も即断即決である。特に液晶などの薄型テレビでの投資の額は莫大である。投資の額も1000億円を越えると、デキナイ社長はビビって決断ができない。

 

 李副会長はこう言った。「日本は国が豊かだし、利益率は3%でいいじゃないですか。それでみんなハッピーじゃないですか。韓国は貧しいですよ。」確かにそうかもしれない。
 けれど、今や大手電機メーカーの利益率は1~2%である。終身雇用も無くなり、リストラもする。かつての技術大国日本の大企業の姿からはほど遠いのである。
 利益率20%をたたき出すサムスン電子に秘密はない。単に、適切な額の投資を適切なタイミングで躊躇なくしてきただけである。

 

 はっきり言って、今の国内企業に必要なのは、このようなリーダーシップが発揮できる経営者であろう。日産自動車がゴーン氏を迎えて立ち直ったように、電機メーカーも社外からプロの経営者を迎えるべきである。たとえば、サムスンの副社長を引き抜いて社長に迎えるとかね。

 


この拙文は、フジサンケイ ビジネスアイ(日本工業新聞)の「i's eye(アイズアイ)」というコラムに2004年11月24日に掲載されたものです。
これからも、たまに執筆させていただきますので、日経産業新聞とか日刊工業新聞とかは止めてぜひビジネスアイをご購読ください。

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